宝塚歌劇という文法。 宝塚・花組『ポーの一族』
初めての宝塚
正確には2回観たことがあるんですけど、一回は小学生の時叔母につれてってもらったのですが、確かノイシュバイタイン城の話だったような?気がするだけでぜんぜん覚えていない。
二回目は高校が兵庫県の学校だったので確か芸術鑑賞か招待があったのか何だったかで鑑賞。
お芝居のパートは全く覚えておらず、箸が転がっても笑ってしまう時期だったのでレビューでの衣装の奇抜な、多分羽飾りの揺れ方がツボに入ってしまい友人たちと大笑いした記憶だけ。嫌な客だな。過去の私、絶対一緒に見たくない。貸切公演で本当に良かった。
というわけで(自主的に見に行った)はじめての宝塚。になります。
観る前からテンションが上がる
で、今回10何年ぶりに観た宝塚。豪華絢爛でびっくりした。まずはホール!
真っ赤な絨毯を歩き進めるとレストランやジェラートやはん、お土産やさん、ギャラリーなんかもあって楽しい。
チケットをもぎってもらったらお正月だから?ポストカードをくださいました。1日だと紅白饅頭がもらえたみたい。すごい。
ロビーが広い!軽食も売ってるバーがあるし、立って食べるテーブルとかも何台もある。
今回のポーの一族のテーマが自動演奏のピアノで鳴ってる。もうこれだけでテンション上がります。
パンフレット(プログラムって呼び方)が1000円で感動。安いー… 普段だと2000円以上するもんね。
座席、SSがとれずSだったんですがど真ん中でめちゃくちゃ見やすかった!
座席が互い違いだし、緩やかに傾斜があるので見やすい。ただおば様方のお香水がかぐわしくて臭いに敏感な方はマスクいるかも?
開演の直前、SNSにあげないなら舞台を撮影してもオーケー!薔薇の背景の前にどどんと大きいポーの一族の看板。はじまりからドキドキワクワクさせてくれる。すごいぞ宝塚!
原作が好きすぎて。
そもそもなぜ今回宝塚を観たかというと、原作の『ポー』が好きで、萩尾望都作品が好きという理由があります。萩尾さんの作品は野田秀樹「半神」、Studio Life「トーマの心臓」等で何度か舞台化されていますがタイミング合わず…というか正直そこまでモチベーション上がらずっていうのがあって未見。
思い入れが強すぎるとメディアミックスを敬遠してしまう…と云うおたくあるあるだったんです。
しかし今回萩尾先生御自ら待望されていた小池先生の演出、しかもビジュアルが最高じゃないですか!というわけで一発発起したのでした。
豪華絢爛、宝塚流アレンジのポー
ストーリーはほぼ原作通りで、エドガーがバンパネラになり、アランを仲間に加えるまでをほぼ時系列的に見せてくれます。よって原作より理解しやすいものとなっています。
ポーが宝塚で上演されるまで25年間もまたせたのかというとストーリーにロマンスがほぼないこと、少年を主人公にしていることなどが大きかったようです。しかし今回明日海りおさんという少年性が強い方がトップに現れ、時代も変わってきてゴーサインが出たと。
そして私は昔ミュージカルが苦手だったんですが、今はジャージーボーイズ等をはじめとした素晴らしい作品に出会えたためミュージカルが好きになっている。なんと幸福なタイミング!
ストーリーはほぼほぼ原作通りと言いましたが、演出が宝塚的なのですごくエンタメ作品になっています。原作はヨーロッパ映画のような雰囲気なんですけど、ハリウッド映画になったような感じ。
まずセットがバンバン変わるし回る。豪華のホテル、学校、お屋敷、バラ園……
昨今の2.5なら全てを映像で済ましてしまうかもしれませんが、宝塚は建つ。建っては引っ込み建っては回りを繰り返します。(この引っ込むのが袖に引っ込むだけじゃなくて奥や奈落に引っ込むんですけどあまりのスムーズさにビビりました。仕組み知りたい…)
きわめつけはラストシーン。アランとエドガーが旅立つシーンでゴンドラが上下左右に動く動く!これはちょっと動きすぎで笑いそうになりました。
文脈に則るということ
しかし開幕すぐ、エドガーが登場し歌ったところだけで涙がうるっとしてしまった。
好きなキャラクターが舞台に立っている!それだけで泣いた!という話を「ふーん」とか、「いやどんだけだよ」と思ってたんですが、10年以上も前から知っていたエドガーが圧倒的な美しさと歌声をもって降臨した姿を目にし、完全に陥落しました。
明日美さんのエドガーは皆さん「完璧!」とおっしゃられますが、おっきいし(当たり前です)少し明るい印象。華やかすぎる。でもそれがこの演出、豪華絢爛な宝塚にぴったりだと感じました。
漫画を舞台にするってこういうことだよね。こういう楽しみ方があるよね。ってことを改めて感じさせられました。
ビジュアルを宝塚の文脈でとことん突き詰めて原作に寄せ、演技や演出も宝塚の文脈でやっているから違和感がない。「ああ、これは宝塚の世界のエドガーなんだな」と納得できる。
2.5でもそうですがその作品、その舞台演出の文脈に則ることって大切だと私は思っています。
よくアニメと声が違うから無理!とか全然顔が違うとか話を聞くけど、モノマネやってるんじゃないじゃん?って思います。
アニメにはアニメの
漫画には漫画の
演劇には演劇の文法がある
その点今回のポーの一族は宝塚的な文脈に則って原作をそのまま舞台に落とし込み、ドラマティックに仕上げていて、拍手が止まりません。プロの仕事を見た。これが100年続くエンタメの殿堂たる所以かと納得しました。
またきになる原作があれば見たいなーと劇場を後にしました。
まさか誘われて一ヶ月足らずで「ドクトルジバゴ」を見るとは思いませんでしたが…笑