世界で一番かわいいです

舞台、特撮、映画、エンターテイメントをツイスターゲームのごとく楽しんでいます。

いびつで愛しい「散歩する侵略者」

久々に映画欲が高まっていて、今月は『ELLE』『3度目の殺人』『散歩する侵略者』『ダンケルク』と4本も見てしまった。好みだったのは『ELLE』と『散歩する侵略者』。

そのうち私が一番興奮したのが『散歩する侵略者』。

上映があとすこしで終わりそうな気配なのでぜひ若手俳優おたくの人々にも見て欲しくてダイレクトマーティングしようと感想を書きます。

sanpo-movie.jp

ちなみに私は監督の黒沢清のファン。大学時代にすんごいちっさい劇場で監督のオールナイトをみにいったりトークショーをききにいったりするくらいには好き。

とりあえず公開されたら見に行くんですけど、一つ前の『ダゲレオタイプの女』を見逃してめちゃくちゃ落ち込んだ。えーんえーんブルーレイ買おう…でも映画館で見たかったな…そろそろホームシアター計画を進めるべきかな…

 

それはさておき、今回若手俳優好きな人にオススメポイントは高杉真宙くん演じる宇宙人がとにかく美しいので見るべきということです。

別にファンとかじゃないんですけどすごい綺麗な子だなーと思ってみてて、でもなんか面白い映画に出ないっていうか、スウィーツ層狙いの作品が多くってもったいないなーと思ってました。キラキラした役よりくらい鬱屈した役とか見たいなと思っていました。

そしたら大好きな黒沢監督の新作に出る!しかも宇宙人役じゃないですか。これはハマる。

 予想的中。何度も見ながらキャスティングしてくれた人に感謝を述べました。

 あの綺麗で透明感ある少年が親にもなり得る年齢の長谷川博己に生意気な口をきいたり、おねだりする危なっかしい感じがとにかく最高。ちょっとビーでエルな雰囲気も好きな人にはたまらないのではないか。

カラッとした残酷さを持った美青年・天野をぜひスクリーンで見てほしい。

 

ただ、黒沢清映画って好みばっつり別れるから、こういう人は好きじゃないかも

・純粋に世界侵略する宇宙人を描いた超大作SF

・物語に整合性をもとめるひと

 

あ、ホラーではないですのでその辺の心配をされている方はご安心ください!

 

数日間の行方不明の後、不仲だった夫がまるで別人のようになって帰ってきた。
急に穏やかで優しくなった夫に戸惑う加瀬鳴海。
夫・真治は会社を辞め、毎日散歩に出かけていく。一体何をしているのか…?

その頃、町では一家惨殺事件が発生し、奇妙な現象が頻発する。
ジャーナリストの桜井は取材中、天野という謎の若者に出会い、
二人は事件の鍵を握る女子高校生・立花あきらの行方を探し始める。

やがて町は静かに不穏な世界へと姿を変え、事態は思わぬ方向へと動く。
「地球を侵略しに来た」真治から衝撃の告白を受ける鳴海。

当たり前の日常は、ある日突然終わりを告げる。

以上公式HPから引用

 

地球を侵略しにくる宇宙人が斥候…調査員みたいな感じで3人の宇宙人を地球に送り込んで、そいつらが天野、立花あきら、真治の体にのりうつり、地球人から「概念」を奪っていく。例えば「家族」例えば「自分と他人」例えば「仕事」。

この概念を奪うという感覚が面白かった。

 

最高のカットが冒頭に!

黒沢監督はとにかく画がうまい。

印象的なシーンの連続で、いつも「あ、これ見れたらもうあとどうなってもいいかな」って思えるような映像をとるんだけど、今回は金魚をすくう女子高生から、何の変哲もない(いやちょっとすでにもう不穏だけど)家での惨殺された家族のカット、からの血まみれ女子高生が田舎道をひょうきんな音楽の中闊歩するカットでもう満足でした。

 

登場人物がみんなかわいい

前述の高杉真宙演じる生意気天野しかり、人を殺しまくりながらもけろっとしてるあきらしかり、皆どこか愛すべきキャラで、ゆるくて可愛かった。

好奇心に負けてしまい宇宙人のガイドをつとめてしまう桜井も、なんかうさんくさくて行動に一貫性がないんだけど天野とあきらのお守りをしているみたいで愛らしい。

 

松田龍平演じる真治と妻の鳴海(長澤まさみ)のラブストーリーもいい。

記憶を失った真治…というか宇宙人にのっとられた真治が鳴海というガイドをつれて歩いているうちにどんどん人間らしくなり、鳴海のことを愛していくのがすごくいびつで面白かった。

宇宙人であるということを認めつつも、愛していく鳴海もかわいい。

大嫌いだったかぼちゃの煮付けをうまいうまいと食べる真治に溢れる笑顔で「どんどん食べて!」っていう長澤まさみの普通の女感、いいなあ。

 

すべていびつで説明不足だけど、そのいびつさを楽しむ

映画だと思ってみてください。

ほんとSFとしては穴だらけだし説明少ないしラブストーリーともいえないし中途半端だっていわれたらまあそうなんだけど。

なんかいいんだよね。

雰囲気やカットや登場人物がいい。

本当に黒沢清らしい映画なので、ぜひ見てみてください。

 

 

 

 

 

ラストについてネタバレ!

 

ただラストがなー!!!!

愛が地球を救った的な。

愛という概念を宇宙人が知ったから撤退した!みたいなん。

なんかありきたりというか、え、うそ?うそやろ?そんなこと監督全然思ってないやろ?って感じでした。でも額面通りにはうけとれないというか。そういうところが面白いですねやっぱり。油断できない。