世界で一番かわいいです

舞台、特撮、映画、エンターテイメントをツイスターゲームのごとく楽しんでいます。

 原作との剥離による功罪『舞台『弱虫ペダル』新インターハイ篇~ヒートアップ~』

久々に感じるペダステ。やっぱり面白かった。今回初めて2階席で見たんですが、ライティングやフォーメーションを楽しめるのですごく良かったです。いやーすごい計算されてるし、美しいね。そして今回からまた箱のサイズが1年目のインターハイの時と同じくらいになったから見やすい。前は広すぎたなという感じ。

 

細かい表情はオペラ使わないとわからないけど、推しがいない時は後方でもいいもんですね。

 

 ※以下感想…というかペダステにおけるキャラと役者の剥離についてですがめっちゃ長いです

www.marv.jp

原作のファンの方には申し訳ないが、私は2年生編の弱虫ペダルを脱落している。

1年目のレースの内容を踏襲するかのようなストーリー展開、作者による特定キャラのえこひいき?ともとれる無理な展開及びそれゆえにキャラクターたちの性格がどんどんぶれて行っている感じが辛くなり、気づけば読むのをやめてしまった。

 

まさにこの『舞台『弱虫ペダル』新インターハイ篇~ヒートアップ~』編の途中、いろは坂で手嶋が真波を待つシーンで。

 

マシントラブルでチェーンが外れ、停止を余儀なくされた真波を手嶋は無視して走ることができたはずだ。それでも手嶋は待つ。万分の一のチャンスを逃して。

私は原作を読んだ時「綺麗事だ」と感じたし、それがスポーツマンシップだといっても相手は天才・自分は凡人だぞ?と苛立った。

手嶋、お前そんなキャラやったか?!策士キャラどこいってん!あと凡人の手嶋と真波が競り合ってるのもよくわからん…

 

しかし。

この舞台ではなぜか鯨井くん演じる手嶋を応援してしまっていた。

原作を読んでいた時は真波を応援していたのに。

 鯨井くんの演じる手嶋は手嶋であって、手嶋じゃない。しかしこれは否定的な意味ではない。(個人的な感想です!)

 

俳優・鯨井康介が手嶋純太の体になった時、

「俺は凡人だ」

と繰り返しいってもなぜかそんな気がしなくなってくる。影でめちゃくちゃ努力してるんだろうなと感じさせられてしまう。鯨井康介」がそう見せてしまうのだ。

誰よりも通る声と、年長者ゆえに力強く見える立ち姿に。だれよりも回すそのケイデンスに。トークでのそつのなさと嫌味のなさに。

チーム(カンパニー)を思うキャプテンシーに心を震わされてしまうのだ。

 

そしてついに私は山岳リザルトシーンで「手嶋、頑張れ!」と願って泣いていた。

なんてことだ。

 

鯨井くんの演じる手嶋は漫画・弱虫ペダルの手嶋純太ではなく、舞台・弱虫ペダルの手嶋純太なのだ。

私は舞台・弱虫ペダルの手嶋純太を応援した。

 

 

前々から感じていたけど、ペダステは原作キャラクターとのズレがあるキャラクターが多いように感じる。

 

ちょっと話が新インターハイ編からズレちゃうのだが、鈴木拡樹くんが演じた荒北さんなんかもそうじゃないかと思う。

むちゃくちゃ当時人気絶頂だったので言いにくかったんだけど、荒北さんってあんなに江戸っ子みたいだっけ?ドスもききまくりじゃん!と思っていた。しかしペダステでは説得力をもって存在し、回を追うごとに間違いなく荒北さんに見えていったのを直に私は感じていた。

鈴木くんの荒北には英治さんの福富しか、英治さんの福富には鈴木くんの荒北しかありえないとさえ思っていた。

 

今回だと黒田も原作より強そうでっていうか絶対強い。なんか美しいし、びっくりしたけどこれはこれでありだなと思わされた。(坂道倒れたところの汗すごかった…あと蹴り上げる脚よ!)

 

 

昔確か『舞台・華アワセ』だったかな?で、根本正勝さんが

「原作付きを演じる時はキャラに達してないといけないけどキャラを超えてはいけない」

とおっしゃっていて、はー素晴らしいな。原作ファンのことをわかってらっしゃる……と思ったもんですが、

 

ペダステはガンガン超えていく。

しかし、これは賭けだ。 

前述の鯨井くんや鈴木くんはすごく奇跡的なバランスでもって舞台に存在している。

役者自身がキャラクターと向き合って説得力を持つ演技をしなければならない。

 

 

ファンの間でも賛否両論のギャグシーン。

ペダステのギャグシーンはキャラでなく「俳優」として舞台に立っている時が少なくない。塩梅によって冷めてしまったりすることがある。というか結構ある。

激しい運動が続くペダステの、休憩といえば聞こえはいいが、もっと他にやり方がないのかな?とも思ってしまうことがある。

 

全員が全員役を演じ切っていればそうは感じないのかもしれないが、メインのキャラクターを食ってしまうくらいになると話は別だ。

今までは金城演じる郷本さんに。今回は今泉演じる和田雅成くんにそれを感じてしまった。今泉にそれほど見せ場がないということもあるかもしれないが、まずはきっちり「今泉俊輔」を演じてからにしてほしい。

 

 

原作を忠実に再現してほしいと思う原作ファンは多い。

私もまがりなりに原作ファンなので、あまりにも原作と逸脱してしまうと萎えてしまうし、オリジナルエピソードが多いと「いやそれ自分の作品でやれよ」と思ってしまう。

 

それでも舞台に上げるという時点で次元も変われば第三者が「演じる」という要素も加わってくるので、もう別物として、演劇作品として楽しむくらいじゃないといけないのではないか?

原作の流れをそのままやったからといって、名作になるわけじゃない。舞台には舞台の、時間と空間があるのだから。

 

散々原作と違うキャラについて書いてきたけど、原作から飛び出てきたような、それでいて生身の良さを引き出してくれたキャストも多い。

個人的には前回からの百瀬朔くん演じる鳴子が熱かった!!台詞回しもパワフルに動き回る姿も全身で鳴子を表していた。最後、展開を知らなかったので彼が1位を取れなかったことに愕然とした。辛い。

また戻ってきてくれた椎名鯛造くんの鏑木もめちゃくちゃばか!!!って感じで素晴らしかったですね。動きも発声も何もかも頭何も詰まってないのでは?!と心配さえしてしまう。(椎名くんは非常にクレバーな役者だと思っています)

あとは小毬くん、新しい古賀さん、葺木場くんもすごい原作まんま。

小野田くん役の醍醐くんははすごい成長したなー!と感じました。滑舌もペダリングももうあまり心配じゃないぞ。若い。すごい。成長している。リアル坂道だ。

 

ペダステはすごく原作愛に溢れた作品だ。演出のシャトナーさんが連載時からのファンだし、舞台のそこここに愛が溢れている。

 

原作を離れてしまったけれど、多分この先も見に行くと思う。

舞台上に立ち現れる「弱虫ペダル」の世界はいつも私を熱くしてくれる。